あご野焼き(あごのやき)
島根県あご野焼き(あごのやき)
分類(大)
水産
分類(小)
練り物
主な使用食材
飛び魚、地酒
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主な伝承地域
県東部地域(松江市、出雲市)
食品概要(特徴・種類)
「あご」とは飛び魚のことで、日本海で5~9月にかけて豊富に取れる飛び魚のすり身を炭火で焼き上げたものがあご野焼きである。一説には「あごが落ちるほどおいしい」ことから「あご」と呼ばれるようになったと言われる。
見た目はちくわに似ているが、ちくわに比べて肉厚で噛み応えがあり、噛むごとに旬の飛び魚の旨味と甘みに加え、製造工程ですり身に練り込む地酒の香りが口一杯に広がる。また、程良く焦げた薄皮の旨味と食感が合わさり、ちくわとは全く異なる趣を味わうことができる。
歴史・文化、関連行事
昔から島根では日本海で水揚げされる新鮮な魚介を使った加工品作りが盛んに行われてきた。中でもあご野焼きの歴史は古く、江戸時代には松江藩主も食した、この地域ならではの伝統食である。
まだ氷も無い時代に、漁師が浜で取れたての飛び魚をすり身にし、竹に巻きつけて焼き、保存食として家に持ち帰ったのが始まりとされ、「かまぼこの原型」と言われている。戦前までは、初夏になると多くのかまぼこ店で焼かれる「野焼き」の香ばしい匂いは松江の初夏の風物詩だった。
現在も飛び魚のすり身に地酒を練り込むことがあご野焼きの大きな特徴と言われるが、以前は、江戸から出雲地方に伝わる調理酒「地伝酒」を使用することで、独特の旨味を引き出していた。
製造方法
飛び魚の最盛期は5~9月。中でも6~7月の飛び魚は産卵を終えたばかりで脂がのっている。その時期に取れた飛び魚の頭や内臓、皮、骨を丁寧に取り除き、地酒と塩を加えてすり身にする。現在は焼酎や日本酒なども使用されるが、昔は出雲地方に伝わる、清酒よりも甘みが強い独特の調理酒「地伝酒」を使用していた。すり身が十分に練りあがったら、アルミ製の心棒に5cm程度の厚さに巻き、炭火でゆっくりと焼き上げていく。その時、ただ焼くだけでなく、板に多数の針がついた「突き立て棒」で野焼きの表面に無数の穴を開けることで、厚みのある野焼きの中まで十分に火を通すとともに、表面が破裂するのを防ぐことができる。
保護・継承の取り組み
戦後になると飛び魚の漁穫量の減少や食生活の多様化の影響を受けて、老舗のかまぼこ店の多くが廃業した。その影響もあって製造工程の機械化や地元以外の原材料の使用などが進む中、島根県は2001年に「あご野焼きの認証基準」を定め、あご野焼きの品質保護の取り組みを進めてきた。そうした取り組みもあり、地元で取れた原材料や地伝酒の使用にこだわり、炭火による手焼きを復活させるかまぼこ店が出始めている。
主な食べ方
食べやすい厚さに切って、そのまま食べるのが一般的。お茶処として知られる松江では、朝食や夕食の食卓に一品として並ぶのはもちろんのこと、不意の来客があった際のお茶請けなどにも、あご野焼きを切り分けておもてなしすることも少なくない。また、食べ応えがあるため、子供たちのおやつとして食べられることも多い。
あご野焼きそのものにしっかりと旨味付けがされているため、ビールや日本酒などアルコール類との相性も良く、軽く炙ったり、マヨネーズやわさび醤油をつけてもおいしくいただくことができる。