あわびの煮貝(あわびのにがい)
山梨県あわびの煮貝(あわびのにがい)
分類(大)
水産
分類(小)
その他水産加工品
主な使用食材
あわび、醤油
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主な伝承地域
甲府市
食品概要(特徴・種類)
あわびの煮貝は、あわびを醤油で煮た山梨県の名産品の一つ。海の幸を使いながら、海のない甲州の郷土料理の筆頭に挙げられる保存食である。
各店秘伝の醤油ベースのタレに漬けこんで煮たあわびは、独特の歯応えを残しながらも柔らかく、ひと口含めばあわび特有のうま味と磯の香と、あわびのうま味を最大限に引き出すために使われた、ほのかな醤油の香りに満たされる。今も正月や結婚式などの祝いの席に出されることが多く、加工品は贈答用に重宝されている。山国の山梨を代表する贅沢な伝統食として、人々に愛され続ける一品だ。
歴史・文化、関連行事
海のない山梨の名産品に、あわびの煮貝。その誕生の経緯には諸説ある。最もよく語られるのは、約400年前の江戸時代、交通手段も冷蔵手段もない時代に、隣国、駿河(静岡県)で獲れたあわびを醤油漬けにして樽に詰め、馬で運んだというもの。
当時、駿河で水揚げされる新鮮な魚介類のうち、甲州に届くもののほとんどが塩干ものだった。駿河へ買い出しに出掛けた際に市場で見かけた立派なあわびを、なんとか生に近いかたちで国へ運びたいとの思いから、醤油に漬けて樽に詰め、馬にのせて運んだという。甲斐と駿河(吉原)を20里(約78km)の最短距離で結ぶ中道往還の峠道を数日かけて移動したところ、程よい揺れと馬の体温とであわびに醤油と樽の木の香が染み、図らずもいい塩梅の味加減になっていたという。それを再現する調理法が工夫され、名産品にまでなったとされる。
最近では生のあわびと煮あわびのうま味成分の変化が検証され、煮ることでグルタミン酸やアスパラギン酸といったうま味成分が増えていることが明らかになっている。単なる保存食ではない、山国の海産物利用の知恵を浮かび上がらせることとなった。
製造方法
殻付きのあわびの表面も、殻と身の隙間も擦ってよく洗う。殻付きのまま蒸すなどして火を通し、殻から外して醤油ベースのタレにじっくり漬けこんで煮る。
保護・継承の取り組み
専門店等の店頭で販売されるほか、インターネットでも購入できる。木箱に詰めた贈答用のものが多く揃うが、少量パックにしたものや瓶詰にされた製品もあり、家庭でも食べられている。
主な食べ方
煮貝は薄くスライスし、肝付きの場合は肝も小さめの一口大に切り、しそや薄切りにしたきゅうりなどと一緒に盛り付けて食す。肝はすり潰してマヨネーズと和えてソースにし、煮貝にのせて食べてもよい。レモン汁をかけたり、カルパッチョやサラダに仕立てたりと、和にも洋にも使われる。余すことなく煮汁も活用し、炊き込みご飯などにして食べられている。