鮎の甘露煮(あゆのかんろに)
三重県鮎の甘露煮(あゆのかんろに)
分類(大)
水産
分類(小)
調味加工品
主な使用食材
アユ、溜まり醤油、伊勢茶、生姜、砂糖
※ダウンロード可能な画像を使用する場合は「リンクについて・著作権」をご一読の上、
出典を農林水産省「にっぽん伝統食図鑑」と明記し、ご利用ください。
なお、画像提供元の記載がある場合は画像提供元も併せてご記載ください。
画像提供元の記載例
【画像提供元の記載がない場合の記載例】
出典:農林水産省「にっぽん伝統食図鑑」
【画像提供元の記載がある場合の記載例】
出典:農林水産省「にっぽん伝統食図鑑」
画像提供元:〇〇〇
主な伝承地域
多気町、松阪市
食品概要(特徴・種類)
鮎の甘露煮は、焼いたり乾燥させたりした鮎を丸ごと醤油や砂糖などで甘辛く煮込んだもの。三重県では、乾燥させた鮎をまず茶葉(伊勢茶)で煮込み、その後に調味料で味付けして煮込むのが特徴である。じっくり煮込むことで、頭から骨まで柔らかく食べることができるほか、長期保存が可能となる。冷蔵庫の無い時代には、6~8月の旬の時期に獲れた鮎を甘露煮にし、冬の間のたんぱく源として食してきた。現在では保存技術の発達により、季節を問わず食べることができる。
鮎は川を上流まで遡りながら成長するため、その成長段階に応じた味が楽しめる。また河川ごとに育っている藻の種類や量が異なるため、河川ごとに鮎の味が異なると言われている。産卵期の腹子を抱えた雌の鮎は、子持ち鮎として珍重され、これを用いた甘露煮は特に贅沢な一品とされる。
歴史・文化、関連行事
鮎は「香魚」という異名を持つ。春に川にのぼった稚魚は、川底の石に生える珪藻(けいそう)や藍藻(らんそう)を主食とし、それが鮎に特有の香気をもたらすためである。鮎は頭から尻尾、そして内臓まで、全ての部分が食べられるため、古くから様々な食べ方が開発されてきた。甘露煮もその一つであるが、その他にも、内臓を塩漬けした「うるか」や、馴れずしなどの発酵食品もつくられた。
「鮎」という漢字の成り立ちは、「日本書記」に記されている、鮎で占いをした故事からつくられたと言われる。鮎による占いは現在でも、三重県度会郡大紀町滝原の「水戸神神社(みとのかみじんじゃ)」に伝わる。毎年7月の第一日曜日に行われる「おんべまつり」では、川の中程の大岩のくぼみに鮎を投げ入れ、今年の運勢の吉凶を占う神事が行われる。全国唯一の「鮎の占い神事」として知られ、三重県と鮎の歴史的なつながりを今日に伝えている。
かつては、鮎は県内全域で獲れていたが、上流にダムが作られたり、河口堰が作られたりして漁獲量は減少している。しかしながら、県下14河川19の内水面漁業協同組合により資源管理が行われており、それらの河川沿岸で多くの鮎料理屋が見られる。また鮎の養殖業も盛んで、サイズのそろった天然の鮎に近い鮎の供給に努力している。多気町と松阪市の境を流れる櫛田川や清流として知られる宮川の流域では、江戸時代末期創業の「うおすけ」や、明治時代創業の「みなとや」は、甘露煮の専門店としてそれぞれ独自の味を追求している。
製造方法
「うおすけ」や「みなとや」では口から尻尾に向かって串を刺すが、この時、鮎が泳いでいるような形にするのがポイントである(おどり串)。串に刺した鮎を焼いた後、串から外して大きな鍋に隙間なく重ねて並べ、いったん伊勢茶で煮込む。再び今度は醤油や砂糖、お酒などの調味料を入れてじっくり煮込む。各店ごとに秘伝のタレがあり、異なる味付けが楽しめる。また、多くの河川沿岸の料理屋ではおどり串ではなく、まっすぐに並べて煮付ける店も多い。
保護・継承の取り組み
鮎の甘露煮は、今日ではスーパーマーケット等で季節を問わず日常的に購入できる。希少な子持ち鮎の甘露煮は贈答用として利用されるほか、ふるさと納税の返礼品としても出品されている。全国唯一の「鮎の占い神事」が行われる三重県度会郡大紀町滝原の「おんべまつり」では、神事の後、鮎焼きをふるまうなど、鮎食文化を継承し続けている。
主な食べ方
そのまま食べるのが一般的。おかずとして、ご飯やお酒によく合う。