伊勢たくあん(いせたくあん)
発酵食品
三重県伊勢たくあん(いせたくあん)
分類(大)
農産
分類(小)
漬物
主な使用食材
御薗だいこん、塩、米ぬか、その他唐辛子、甘柿の皮、ナスの皮など
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主な伝承地域
伊勢市
食品概要(特徴・種類)
伊勢たくあんは、地元で栽培された「御薗(みその)だいこん」を塩と米ぬかに漬け、じっくりと発酵させて作る漬物。長い期間をかけて発酵・熟成させることで、独特の香味と酸味、歯ごたえが楽しめる。「伊勢こうこ」と呼ばれることもある。
原料となる御薗だいこんは、伊勢市で伝統的に栽培されていたたくあん用のだいこんを、昭和初期に三重県農業試験場(現・農業研究所)が品種改良したもの。白首だいこん系で、一般の生食系より長いので、引き抜くのに力が必要。歯ごたえが良く、漬け込むと美しい黄金色となるのが特色である。またもう一つの特徴は根元と尻尾の太さがあまり変わらないので、漬け込む際に一段一段フラットに漬け込み易いということがある。
漬け込む前に、だいこんをハサ掛け(だいこんを束ね、木組みに掛けること)して1週間~10日ほど天日に干す工程がある。伊勢地方ならではの適度な気温、湿度、寒風によって、だいこんを凍らせることも腐らせることもなく乾燥させることができだいこんに深い甘みが生まれる。かつては御薗だいこんの収穫時期である11~12月になると、周辺の農地にハサ掛けしただいこんがずらりと並び、冬の風物詩となっていたという。
歴史・文化、関連行事
江戸時代の後期、伊勢市周辺の農家の副業として、たくあん作りが盛んとなった。明治時代になると関西一円にその評判が広がり、昭和の初めにはお伊勢参りの参拝客によって、伊勢名物として全国的に知られるようになった。昭和40年ごろに最盛期を迎え、一時は大樽が数十万樽も出荷されたという。
ところが戦後は食生活の変化などによって、ぬか漬けの消費量が激減。御薗だいこんを作る農家や、伊勢たくあんを作る農家・業者が大幅に減少した。風物詩として知られたハサ掛けも、近年では行っているのは数軒だと言う。
製造方法
収穫した御薗だいこんをハサ掛けし、2週間程度、太陽と寒風にさらして自然乾燥させる。乾燥しただいこんを隙間なく樽に並べ、塩と米ぬかを加え、その上にだいこん、調味料と繰り返し重ねていく。重しを乗せて、数か月から2~3年間漬け込む。
調味料として、柿の皮、なすの葉、唐辛子、昆布や、着色のためのウコンなどを加えることもあるが、合成調味料・着色料・保存料は使わず、昔ながらの製造方法が守られている。なお、嗜好の違いから、大阪方面への出荷品と京都方面への出荷品は漬け込む際の味が異なるという。
保護・継承の取り組み
かつては3千ヘクタールにも及んだ御薗だいこんの生産面積が、平成初期には2ヘクタールを切るまでに減少したことから、平成23年、三重県漬物協同組合が中心となって御薗だいこん栽培研究会を発足。御薗だいこんの栽培方法の研究、地元農家への栽培推進や技術指導などに取り組んできた。その結果、現在では生産回復の兆しが見えてきていると言う。
三重県漬物協同組合では、平成19年に伊勢たくあんを特許庁の地域団体商標として登録。生産と消費拡大に努めている。
また、地元の漬物メーカーである伊勢岩尾食品株式会社の伊勢たくあんは、平成29年に三重県の地域ブランド認定制度「三重ブランド」に認定された。
主な食べ方
水洗いしてぬかを落とし、好みの厚さに切って食す。好みで醤油に七味を入れて付けて食べたりする。