木の実のお菓子(きのみのおかし)
京都府木の実のお菓子(きのみのおかし)
分類(大)
その他
分類(小)
菓子類
主な使用食材
とちの実、栗
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主な伝承地域
京都市、中丹地域、南丹地域(南丹市美山町)
食品概要(特徴・種類)
京都の菓子というと、京菓子に代表される華やかなイメージがあるが、中丹地域から南丹地域にかけての山間部では、伝統的に山の恵みである木の実を使った素朴な菓子がつくられてきた。代表的な木の実として、中丹地域に多いとちの実、南丹・中丹地域の栗が挙げられる。
中丹地域の山間部では米や麦が十分に収穫できないため、きびやあわといった雑穀や、とちの実などを使った餅がつくられた。とちの実には特有の渋みがあり、木灰を使った独特の手法で渋抜きし、もち米と共に蒸して餅にした。黄土色や茶色がかった色合いと粘りの少なさが特徴で、残った渋みが独特の風味と香ばしさを餅に与える。乾燥させてあられやおかきに加工することもできる。
南丹・中丹地域はブランド栗として全国的に知られる「丹波くり」の名産地である。丹波地域と呼ばれる南丹・中丹は山々が地域を囲うように連なり、盆地を形成していることから、昼夜間の寒暖差が大きい。また、山の間を大小の河川が流れ、肥沃な土壌にも恵まれるなど、農作物に甘みが増す条件がそろっていることから、栗も質の良いものが育つと考えられている。
またこの地域では、ゆで栗や焼き栗、甘露煮、栗おはぎなど、さまざまな方法で栗を加工してきた。産地では9月末からの栗のシーズンを迎えると、各家庭で採れた栗を用いた様々な加工品がつくられ販売される。
歴史・文化、関連行事
栃の木は、人里離れた山間に自生する落葉広葉樹で、きれいな木目が出る木材として利用される。また、とちの実は栄養豊富なことから食用の歴史は古く、縄文時代の遺跡からも多く出土している。かつて、耕作地に恵まれない山村ではドングリなどと共に主食として食べられ、京都でも飢饉の際の食糧として備蓄ができることから大切にされてきた。
奈良時代から糸づくりとともに発展してきた綾部市の「水源の里」と名付けられた集落には、秋には樹齢500~1000年の栃の木たちが一斉に実をつける。この栃の木の群生は推定1500本ともいわれている。この地区では、昔ながらの製法でつくられるとち餅をはじめ、おかきやあられ、クッキーなどの商品開発を行い、地域活性化に取り組んでいる。
南丹・中丹地域でとれる「丹波くり」は、品種ではなく、旧丹波国(福知山市・綾部市・亀岡市・南丹市・京丹波町・兵庫県丹波市・丹波ささやま市・大阪府能勢町)でとれる栗のことを指し、非常に大ぶりで甘みがあるのが特徴である。その歴史は古く、平安時代中期の「延喜式(えんぎしき)」に「丹波くり」の名が登場していることから、この頃から貴族の間で食べられていたと考えられる。江戸時代には、幕府や朝廷への献上品として重宝されていたという。
数ある栗の菓子の中でも、「栗おはぎ」は丹波くりと蒸したもち米と砂糖だけでつくった栗あんで包んだ郷土菓子。かつては丹波くりの季節になると、子どもたちが「亥(い)の子のぼたもち呼んでんか、ひとつやふたつで足りません」というわらべ歌を歌いながら、集落の家を回って栗のおはぎをいただくという風習があったとさる。
現在でも、京都各地には栗菓子の専門店が存在している。舞鶴市にある老舗和菓子店では、舞鶴鎮守府初代長官だった東郷平八郎が好んだといわれる栗まんじゅうが、今も販売されている。
製造方法
<とち餅>
程よくアクを抜いたとちの実ともち米を合わせて蒸して餅にする。アク抜きは、まず実を2日間流水にさらし、1か月間天日干しします。その後お湯で温めて柔らかくし、“栃へし”という道具を使って一つひとつ皮をむき、実を水から茹でる。そこに灰を入れ2~3日間保温しながらアク抜きをする。経験と手間暇が必要な作業である。
<栗おはぎ>
ゆでた栗の実をすりつぶし、ごく少量の塩と砂糖のみ加え、味の調整は栗の煮汁で行う。砂糖を入れすぎないことで栗の持つ甘みが引き立つ。もち米、うるち米を使い、餡でくるむ。
保護・継承の取り組み
綾部市古屋地区では、とちの実を活用した地域振興を進めている。とち餅を始め、おかき、あられ、クッキーなどを商品化し、綾部市観光協会やあやべ特産館、彩菜館などで販売している。秋にはとちの実の皮むきボランティアやとち餅作りの技術継承イベントが開催されている。
京丹波町の和知地区の加工グループ「さとやま」による栗おはぎは、地元の栗、もち米・うるち米でつくられる地産地消の一品で、地域の道の駅で販売され好評を得ている。
主な食べ方
とち餅は、通常の餅と同じように、醤油に付けて食べたり、海苔を巻いて磯部焼きにしたり、きなこなどをまぶして甘くして食べるのも好まれている。もち米だけでつくる餅よりも、独特の風味と素朴な味わいを楽しめる。