桃のシロップ漬け(もものしろっぷづけ)
山梨県桃のシロップ漬け(もものしろっぷづけ)
分類(大)
農産
分類(小)
その他農産加工品
主な使用食材
桃、砂糖、食塩水
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主な伝承地域
峡東地域(山梨市、笛吹市、甲州市)、南アルプス市
食品概要(特徴・種類)
山梨県の桃の収穫量は全国の約3割を占め、日本一を誇る(農林水産省「令和4年産もも、すももの結果樹面積、収穫量及び出荷量」より)。オリジナル開発品種を含む多品種を生産するが笛吹市を筆頭に、山梨市、甲州市の三市で構成される峡東地域はとくに良質な桃が多く生産されることで知られている。
皮が薄く繊細な桃は、食べ頃がくると3日ほどしか保存がきかない。そのため桃農家では、規格を満たさない〝はねだし〟の桃をジャムなどの保存食に加工するなどし、日常的に利用してきた。なかでも桃王国・山梨らしいといえば、このシロップ漬け。甘さを控え、桃本来の上品な甘みと香りがしっかり残るシロップ漬けは、一大産地ならではの加工品。今では数多ある果樹農園で競うように製造され、全国に広く出荷されている。
かつては専ら、夏の贈答用に生の桃が重宝されていたが、みずみずしい桃を真冬でも楽しめる保存食品・シロップ漬けが年末年始の贈答品としても人気を得ている。
歴史・文化、関連行事
もともとは桃農家が〝はねだし〟の桃を自分たちで消費するため、ジャムや砂糖煮、そしてシロップ漬けに加工していた。甘みの足りない桃を美味しく食べるための、そして長期間楽しむための産地ならではの料理だったものが販売用に見直され、年間通して生に近いすっきりとした甘さの桃のシロップ漬けが全国で食べられるようになった。
なお、山梨の桃の歴史は古く、江戸時代の書物「甲斐叢記(かいそうき)」には、桃を含む〝甲州(甲斐)八珍果〟と呼ばれる果実が献上品として江戸に運ばれていたことが記されており、その頃には栽培が行われ、根付いていたことがうかがえる。
製造方法
水洗いした桃を縫合線に沿って包丁で2つに切り、スプーンで種を取る。2~4等分のくし形に切って皮をむき、変色を防ぐため食塩水に5分浸ける。沸騰した湯に入れ2~4分煮たら、流水に取って急冷し、アクを抜いてザルで水気を切っておく。ポイントは、硬い桃を選ぶことと茹ですぎないこと。
並行して、保存瓶の準備も行う。瓶は水から火にかけ、沸騰後30分加熱した後、水気を切って冷ましておく。一瓶につき砂糖60gと水大さじ1を入れ、砂糖をよく溶かす。そこへ桃を均等に詰めて湯を瓶の肩口まで注ぎ入れ、少し放置しておく。水位が下がったら湯を足し、軽くふたを閉めて蒸し器へ。蒸し器に水を入れて火にかけ、沸騰後、約20分蒸したら瓶を取り出し、ふたをしっかり閉める。瓶を逆さにして漏れがないか確認し、冷めてから、ふたの中央がちゃんとへこんでいるかも確認する。
製造年月日等を記入したラベルを貼付し、冷暗所で3ヶ月以上保存する。その頃には味が均一になじみ、美味しく食べられる。賞味期限(保存期間)は約1年。
保護・継承の取り組み
先人たちの工夫と苦労の賜物である山梨の果樹栽培の重要性を伝え、少子高齢化等により困難になりつつある農業継承へのきっかけとするため、日本農業遺産の認定(2017(平成29)年)に続き、世界農業遺産への認定申請に応募。2023(令和5)年、起伏と傾斜が大きい扇状地の立地で、桃を含む10品目以上の果樹を適地・適作し、何世代にもわたって継承されてきた〝峡東地域の果樹農業システム〟が国連食糧農業機関(FAO)により、将来に受け継がれるべき重要な農林水産業システムとして世界農業遺産に認定された。
また、「山梨県笛吹川フルーツ公園」(山梨市)を家族連れで楽しめる場として整備し、果樹を気軽に間近で見られる施設として運用している。
主な食べ方
果肉はそのまま器に盛って食されるほか、スウィーツの材料としても使われる。シロップは、冷えた炭酸水等で割って飲まれている。