笹巻き(ささまき)
山形県笹巻き(ささまき)
分類(大)
農産
分類(小)
その他農産加工品
主な使用食材
もち米、笹の葉、きなこ、砂糖
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主な伝承地域
山形県全域
食品概要(特徴・種類)
笹巻きは、餅米を笹の葉で包んで煮る「ちまき」の一種。主に端午の節句を祝う行事食として、子どもの健やかな成長を願いながら柏餅とともに供え、きなこ砂糖などをかけて食べられる。
製法に地域性が見られるのは、笹巻きの大きな特徴。例えば笹の葉の巻き方でいうと、主流の三角巻きのほか、最上地域では円すい型、置賜地域ではげんこつ型に巻かれるなどの違いがあり、同地域内でも細かく差異がある。葉を巻き留める植物のつるも手近にあるものが使われたため、イグサやスゲなど、さまざまだ。
とくに際立った地域性といえば、鶴岡市をはじめ、庄内地域南部の笹巻きが挙げられる。餅米は通常、水に浸して使われるため白く煮あがるが、この地域に限っては、ナラやブナなどの広葉樹を燃やした木灰を水に加え、煮詰めて濾過した灰汁(あく)に浸漬するため、強アルカリ性の灰汁の働きで餅米は黄金色に色づき、米粒が溶けたように癒着してゼリー状のプルプル食感に変化し、独特の風味を持つ笹巻きに仕上がる。
歴史・文化、関連行事
平安時代に編纂された『倭名類聚鈔』の「和名知萬木」に、餅米を植物の葉で包み、灰汁で煮込んだものを5月5日に食すという記述があり、この頃には笹巻きや「ちまき」がつくられ、端午の節句に食されていたことがうかがえる。笹の葉より強い灰汁の殺菌力や防腐効果によって長期保存が可能となり、戦国武将や山伏の携行食としても重宝されたという。
なお、鶴岡にのみ灰汁を使った笹巻きが存在する理由については諸説ある。積み荷とともに、各地の技術や文化も運んだ北前船によって九州地方の「あくまき」がもたらされたという説や、同じ九州由来説でも1632(寛永9)年に熊本から配流され、丸岡城に幽閉された加藤忠広により伝えられたとする説、あるいは戊辰戦争がきっかけだったとする説もある。
また、戦国時代に食べると大勝したという合戦の縁起物、「朝比奈ちまき」を徳川家康が家臣に命じて献上させたと文献に記されているが、朝比奈家に伝わる古文書によると、それはツバキの木を燃やした灰を使った灰汁に餅米を一晩浸して蒸したものだったとあり、鶴岡の笹巻きと通じる。庄内藩を治めていた酒井家は徳川四天王に数えられる名家とあって、朝比奈ちまきの製法が伝授され、武家の多い城下町・鶴岡でのみ広まったとも推測できるという。
伝統的には携行食や端午の節句の振る舞いなどに食べられてきたが、土地によっては「七つ祝い」や「米寿の祝い」に筍形の笹巻きを贈る習慣が残されている。笹巻きは、山形に深く根をおろしたハレの食文化である。
製造方法
三角巻き:
餅米を一晩水につけ、ざるにあげて水を切る。※庄内地域南部の場合、餅米は灰汁につける。
熱湯にくぐらせて水気を切っておいた笹の葉を、三角の筒状にして盃一杯を目安に餅米を入れ、笹の葉をもう一枚使ってふたをするように包んでイグサのつるで結ぶ。5個ずつ束ねて、たっぷりの水を火にかけ、沸騰後1時間ほど茹でる。茹であがったら、重ならないようにざるに広げて冷まし、きなこ・砂糖に塩少々を混ぜたきなこ砂糖などを添えれば、出来上がり。
保護・継承の取り組み
高齢化が進み継承の危機が続くなか、各市町村の観光協会や地域のNPO法人など、さまざまな団体により、これからを担う小中学生を含む一般の人を対象にした、笹巻きづくりの体験教室が開催されている。
また、笹巻きは直売所や観光物産館などで販売されるほか、インターネット販売も行われ、気軽に購入できるようになった。
なお、独自色の強い鶴岡市をはじめとする庄内南部の笹巻きが2022(令和4)年、文化庁の「100年フード」に認定された。
主な食べ方
笹の葉をほどき、きなこ砂糖をかけて食べるのが一般的だが、そこに塩を加えたり、砂糖ではなくきなこと黒蜜を合わせたりする地域もある。灰汁水を使う庄内地域南部の笹巻きは、黒蜜と青きなこをかけて食べられることが多い。