宇治茶(うじちゃ)
京都府宇治茶(うじちゃ)
分類(大)
その他
分類(小)
飲料
主な使用食材
茶葉、玄米
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主な伝承地域
宇治市を中心とする南部一帯
食品概要(特徴・種類)
宇治茶は一般的には京都のお茶として知られているが、宇治茶の定義としては、京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産の茶葉を、京都府内業者が宇治地域に由来する製法により仕上げ加工した緑茶のことを指す。茶葉の生育には、肥沃で水はけのよい土壌、年間の雨量が多いこと、小高い傾斜のある地形により昼夜の寒暖差が大きいことなどの条件が必要であり、宇治川、木津川が流れる一体はそれらの条件を備えていたことから、宇治茶の一大産地となった。
宇治茶には、茶葉の栽培方法や製法の違いにより「碾茶(てんちゃ)」「煎茶」「玉露」「ほうじ茶」「かぶせ茶」「玄米茶(蓬莱茶)」などがある。なかでも、碾茶を粉末にして飲む「抹茶」は、戦国時代に成立した茶の湯文化とともに洗練、継承され、今日の抹茶加工品ブームにまで繋がる、京都のお茶の最大の特徴ともいえよう。
茶葉は一年に2~3回の茶摘みが行われる。その年の4月下旬~5月下旬に出た新芽(一番茶)の葉は、一芽一芽を手で摘み取られ、主に高級茶である碾茶と玉露に使われる。6月下旬~7月上旬の茶葉は二番茶、7月中旬~8月下旬が三番茶と呼ばれる。煎茶は二番茶までの葉が使われる。葉を摘む時期によって味が変わるため、年間を通じて様々な味のお茶を楽しむことができる。
歴史・文化、関連行事
宇治茶の歴史は、1191年に僧侶の栄西が中国・宋より茶を持ち帰ったことに始まる。栄西が伝えた茶を明恵(みょうえ)上人が京都洛北栂尾(とがのお)の高山寺に植樹し、その後宇治に分植されたことにより、今日につながる宇治の茶葉栽培が始まったとされる。15世紀になると、宇治茶は足利将軍家の評価を得て、幕府の奨励により宇治に茶園がつくられるようになった。その一つが、宇治市に現存する「奥ノ山茶園」である。
16世紀になり、茶の湯が盛んになると、千利休ら茶人の要望に応え、渋みを抑える「覆下(おおいした)栽培」が開発され、濃緑色のうまみの強い抹茶が誕生した。その後、宇治茶は時の天下人の庇護を受け、茶産地の中でも特別な地位を確立するに至った。
1738年には、宇治萬福寺の僧・隠元が釜炒りの煎じ茶を伝えたことに着想を得た永谷宗圓(そうえん)が、新芽の茶葉を蒸し、焙炉の上で、手で揉んで乾燥させる「手揉み製法(宇治製法)」を生み出した。この製法がその後の日本茶の製法の源流となった。宇治ではさらなる上質な茶を追求し、覆下栽培と手揉み製法を結び付け、高級茶である「玉露」を生み出した。
幕末から明治時代にかけて、宇治茶は輸出産業の一翼を担い、高品質茶の生産と供給体制が整備された。それに伴い、宇治茶販売は国内市場にも展開し、一般家庭への普及が進むこととなった。現代では、加工、ブレンド技術が発展し、多様で高品質な茶の生産が行われ、宇治茶の名声は確固たるものとなっている。今日でも、宇治市や京都市を中心に数百年の歴史を持つ茶園・販売店が多数営業している。
製造方法
<茶葉の育て方>
茶葉の育て方には「覆下栽培」と「露天栽培」の2通りある。茶には旨味の元となるアミノ酸の一種であるテアニンが含まれている。根でつくられたテアニンは葉まで移動するが、日光に当たると渋みのあるカテキンに変化する。「覆下栽培」は文字通り、茶園に藁などで覆いをかぶせて日光を遮って育てることで、渋みを抑えうま味の多い茶葉となる。碾茶、玉露、かぶせ茶の茶葉は「覆下栽培」で育てられた茶葉が使用される。
一方、煎茶やほうじ茶、京番茶などは覆いをしない「露天栽培」で育てられた茶葉を使用する。日光を充分に受けて育てられるため、渋みが加わった爽やかな味わいの茶葉となる。
<茶葉の加工方法>
現在は製造における各工程は機械化されているが、伝統的な宇治茶は人間の手による「手揉み製法(宇治茶製法)」によりつくられる。種類ごとの製法の特徴は以下のとおりである。
1 碾茶:覆下栽培で育てた緑鮮やかな新芽を蒸し、揉まずに乾燥させる。茎や葉脈を取り除いて石臼でひき微粉末にしたものが、香り豊かな抹茶となる。
2 玉露:覆下栽培で育てた新芽に20日以上覆いをして日光を当てず、柔らかく緑色の濃い芽を育てる。その芽を摘んで蒸し、揉みながら乾燥させる。
3 煎茶:玉露や碾茶とは異なり、覆いをしない「露地栽培」により日光を浴びて育てられた新芽を、蒸して揉みながら乾燥させる。
4 かぶせ茶:玉露と同じ工程でつくられるが、玉露より遮光日数が短い。そのため玉露の風味がありながらも、煎茶のように爽やかな後味の茶葉となる。
5 ほうじ茶:煎茶や川柳(かわやなぎ。新芽の形状が大きく、煎茶やかぶせ茶に入らない茶)などを焙じたお茶。
6 玄米茶:番茶、玉露、煎茶などに玄米を炒ったものを混ぜる。精米される前のお米である玄米ではなく、白米を実際に炊いてから炒ることで完成されるお米を玄米と呼ぶ。
7 京番茶:玉露や煎茶に使う一番茶や二番茶を摘み取ったあと、三番茶や四番茶、もしくは、製茶する前に選別の段階ではじかれた茶葉を使う。春や秋に茎ごと刈り取った大ぶりの茶葉をもまずに天日乾燥し、パリパリになった茶葉を大きな釜を直火にかけ、強火で約1分間、経験と勘で香りと味わいとバランスを見ながら炒り上げる。
保護・継承の取り組み
京都府では、伝統的な煎茶手揉み法「宇治茶手もみ製茶技術」を指定無形民俗文化財とし、保存を図っている。また、「宇治茶まつり」や「八十八夜茶摘みの集い」(立春から88日目に摘んだ茶は上等で、飲むと長生きすると言われる伝承がある)などの行事を通じて、宇治茶の歴史と文化の継承を行っている。
老舗茶園では、石臼で抹茶をつくる体験や、茶器づくり、煎茶講座、工場見学など、宇治茶にまつわる様々な体験を提供している。また、近年は飲料としての利用だけでなく、抹茶スイーツ等の加工品が多数開発され、世代を超えた宇治茶ファンを獲得し続けている。
主な食べ方
急須に茶葉を入れ、お湯を入れて茶葉のエキスを抽出して飲む。お湯の温度は茶葉の性質に合わせて調整するのが美味しく淹れるこつ。飲み終わった後の茶殻には、多くの栄養素が含まれており、茶殻を活用したレシピも多数開発されている。
アレンジレシピ:宇治茶ラテ
材料
宇治茶
小さじ4
グラニュー糖
小さじ2
牛乳
360ml
宇治茶(仕上げ用)
適量
作り方
ボウルに宇治茶をふるい入れ、グラニュー糖を加えて泡立て器で混ぜて、湯大さじ3(分量外)を加えてペースト状になるまで混ぜる。
鍋に牛乳を入れて沸騰直前まで温め、泡立て器で泡立てて、1にそっと注ぎ入れて軽く混ぜる。
器に注ぎ入れ、宇治茶をふる。