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節類

花

歴史、文化

節類はかつおなどの赤身魚の頭と内臓を除去した身を、燻(いぶ)してよく乾燥させ、カビ付けして発酵させた食品群である。かつお節はその代表格であり、うま味の元であるイノシン酸やグルタミン酸を多く含んでおり、和食に欠かせない食品である。
かつお節の起源は、4~5世紀の大和朝廷の頃に大御饌(おおみけ)(神様へのお供えもの)として献上されたものに、「堅魚(かたうお)」が登場したことに始まる。奈良時代の法典『養老律令』(718年)には、「堅魚(かたうお)」「堅魚煎汁(かつおいろり) *かつおを頭から割り、煮出してつくった汁」「煮堅魚(にがつお)」が朝廷への貢納品として挙げられている。「堅魚煎汁」は、味噌や醤油などの調味料がなかった時代に、塩とともに調味料として用いられたと考えられる。

「かつおぶし」の名が最初に確認できるのは、『種子島家譜』(1513年)においてである。1600年代半ばには、土佐(高知県)で燻して乾燥させた後にカビ付けする方法が考案され、その後、カビ付け回数を増やすことで、より堅く、うま味が凝縮された「本枯節」が完成した。
なお、魚を燻して乾燥させる方法は、モルディブ、インドなどの西太平洋の国々で、魚を腐敗させない知恵として古くから存在しており、この手法が海路を経て、日本の各地に伝わったと考えられる。

特徴、種類

かつお節と双璧をなすうま味といえば、昆布だしがある。うま味の本体はかつお節が「5'-イノシン酸」、昆布はグルタミン酸であるが、昆布のうま味はグルタミン酸ナトリウムで代替可能である。かつお節のもつ特有の風味は再現が困難で、現在でもかつお節からつくられている。
かつお節は「世界一硬い食品」と称される。焙乾(ばいかん、燻して乾燥させること)とカビ付けの繰り返しにより、水分量を減らし、極限まで乾燥させることで微生物が成育できない環境となり、保存性が増す。また、生の状態で最初に長時間加熱することで、タンパク質と脂質がある程度除去されるとともに、カビ付けで付着したカビによって脂肪が分解されるため、濁りにくいのが特徴である。 かつお節の他、宗田節(マルソウダ、ヒラソウダ、スマソウダ)、まぐろ節(キハダマグロ)、さば節(ゴマサバ、マサバ)、あじ節(ムロアジ、マアジ)、うるめ節(ウルメイワシ)、いわし節(カタクチイワシ)がある。それぞれの特徴は以下のとおりである。

<宗田節>
高知県土佐清水市を主産地とし、その他熊本県、鹿児島県、関西各地で生産される。
だしは濃厚で、上品な和食には向かないが、主にそばのだしとして使われる。

<まぐろ節>
かつお節に比べて白色がかった赤色が特徴。だしの色は薄く、味は淡泊で上品な吸い物に使われる。

<さば節>
香りは強くないが、だしはうま味が強い。そばやうどんの汁、味噌汁などに使われる。

<むろ節>
熊本県と鹿児島県が主産地。だしは薄い黄色でさっぱりしている。主に中部地方でうどんのだしとして使われる。

<うるめ節、いわし節>
うるめ節は、長崎県、宮崎県、熊本県が主産地。コクのある味が特徴で、関西ではうどんのだしに使われる。
いわし節は、九州地方や愛媛県、和歌山県が主産地。生臭みはなく、うま味がある。ラーメンのだしとしても使われる。

製造方法

原料のかつおの頭と内臓を切り取り、三枚におろす。
切ったかつお肉を籠に並べて釜に入れ、80℃くらいで60~90分間煮熟(しゃじゅく)する。風通しの良いところで放冷後、手作業で骨を抜く。

これを蒸籠(せいろ)に並べ、くん材により焙乾(ばいかん)を行う。1回焙乾したものは「なまり節」と呼ばれる。焙乾は10~20回ほど繰り返される。

焙乾を終えると、タール質で覆われ真っ黒になるので、これを削って取り除き「裸節」とし、カビ付けを行うと1~2週間で表面はカビで覆われる。カビが生えた状態で、天日干ししてからブラシで表面のカビを払い落とし、再びカビ付けをする。
2回以上カビ付けした節を「本枯節」と呼ぶ。ここまで60~80日を要する。

地域との関係性

かつお節は産地により、焼津節、薩摩節、土佐節、伊豆節と呼ばれる。形状や風味など、それぞれの産地ならではの特徴がある。現在では、鹿児島県と静岡県が二大生産地として並び立つ。土佐節を生み出した高知県は、現在ではかつお節ではなく宗田節の生産が多い。

サステナビリティ・SDGsへの貢献

かつお節のメーカーや産地では、かつお節で使う部位以外も含めて有効活用する、持続可能な取り組みが進められている。鹿児島県枕崎市の枕崎水産加工業協同組合では、かつお節では使わない頭部(眼窩脂肪)から機能性食品(サプリメント)を製造したり、骨から天然カルシウムを精製したり、心臓部から美容飲料を製造したりするなど、かつおの恵みを余すところなく使い、貴重な資源の有効活用に努めている。(12 つくる責任つかう責任)

参考文献

福家眞也、高木毅、野村明、森島義明、岡田裕史著.日本伝統食品研究会編.『日本の伝統食品事典』朝倉書店,P535~P556

『特別展 和食~日本の自然、人々の知恵 公式ガイドブック』朝日新聞社、NHK、NHKプロモーション,P80~P81