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練り物

花

歴史、文化

練り製品は、原料となる魚肉に塩を加えて、練ったものを加熱し固めたものである。かつては、世界各地で魚を食す際に木の枝や竹に塩で練った魚肉をすりつけ、たき火であぶり焼きしていたようである。
日本における水産物の練り製品の発祥は平安時代とされる。当時の貴族の行事や儀礼などを記した古文書「類聚雑要抄(るいじゅうぞうようしょう)」には、宴会の膳としてその原型が記されている。

現在に至るまで、日本各地で多種多様な水産物の練り製品文化が生まれ、伝えられている。令和3年度の水産加工統計調査(農林水産省)によると、水産物加工品の生産量全体が約143万tであり、そのうち練り製品は約49万5,000tで全体の3割を超えるほどである。嗜好(しこう)性を重視したさまざまな製品がつくられている。
また、「カニカマ」(かに風味のかまぼこ)は西欧諸国でも広く受け入れられており、「SURIMI」として愛されている。財務省発表の貿易統計(2021年)によると、練り製品の輸出先上位はアメリカ、香港、中国と続き、現地の日本食レストランや寿司屋での需要が高いと言われている。
日本国内だけでなく世界中で注目を集める状況を鑑みると、伝統的な練り製品の伝承のみならず、国境を越えて愛される新しい伝統食の開発が期待される。

特徴、種類

練り製品のなかから2製品、その概要を紹介する。

<かまぼこ>
かまぼこのルーツは諸説あるが、特殊で複雑な製造工程がないことから、特定の地域で考案されたものが広まっていったのではなく、各地域で分散的に生まれた可能性が高いと考えられている。なお現存する最古の資料は、平安時代の『類聚雑要抄』にみる「関白右大臣藤原忠実祝賀料理献立(永久3年(1115年)7月21日)」と言われている。また初期のかまぼこは、焼きちくわ状に加工されていた。
海外においても、北欧ではたらを原料としたフィッシュケーキ、スペインではうなぎの稚魚を原料としたアングーラス、台湾では豚ひき肉を魚のすり身で包んだ魚丸など、世界各地でかまぼこと類似したさまざまな魚食文化が伝わっている。原料となる魚は地域によりさまざまで、各地域で獲れる魚類が活用される。

<ちくわ>
魚のすり身を、竹や金属の柱にすりつけて焼きあげるちくわもまた地域性が豊かである。その名称の由来は、魚類のすり肉を、蒲の穂のように竹串に塗り付けて焼いたところからきている。古書には「蒲穂子」とも記された。 

山陰地方では、とびうおを原料とした「あごのやき」が有名である。また愛知県豊橋市は、現在の製法に通じるちくわの製造が始まった地であると伝えられている。
ちくわの穴に塩を詰めて、さらに塩で覆ったものを保存食として山国に運んだ記録も残る。

製造方法

かまぼこ、ちくわ、ともに多様な製造方法が存在する。魚肉に食塩を加え、すりつぶして、必要な配合素材を混ぜてから成形し、加熱、凝固させてつくられる。
原料のすりつぶし方は大きく分けて、搗(つ)く、と擂(す)るに分けられる。明治時代以前は臼と杵を用いる方法が代表的な製法であった。明治時代に入ると、原料を漁獲する漁船の動力化や機械製網の開発が行われ漁獲量が増加するとともに、水産加工品の製造技術や長期保存技術の開発が進んだ。手動式の肉挽機械が登場したのもこの頃である。
大正時代から昭和初期にかけて、人力を要した製造工程が機械化されることで、大量生産されるようになった。
加熱方法は、あぶる、ゆでる、蒸す、蒸して焼く、揚げるなどが存在する。
成形においても、板付けとする成形方法や、中央に穴をあけた形状とするものなどさまざまである。
現在は、原料となる魚の下処理、調味、すり方、する回数から、冷蔵(冷凍)手段まで、日本各地でさまざまな製造方法が存在する。

地域との関係性

練り製品は、原料となる魚の漁獲地で多種多様な製品が生産されている。例えば宮城県の「笹かまぼこ」、東京都の「はんぺん」、神奈川県小田原市の「蒸し板かまぼこ」、島根県の「野焼きちくわ」、愛媛県の「じゃこ天」、鹿児島県の「つけあげ」、沖縄県の「チキアーギ」などがあげられる。各地の漁港で独自の食文化が生まれており、数えきれないほどである。
鳥取県では大豆の栽培が盛んであったことから、練り物の原料の魚肉に豆腐を混ぜ合わせた「とうふちくわ」も存在する。 

サステナビリティ・SDGsへの貢献

魚肉の健康価値が注目されている。練り製品の原料となるスケトウダラには、良質なタンパク質が多く含まれ、筋肉の維持・増強が期待できる。魚の調理や下ごしらえなどをすることなく、手軽に栄養を摂取することができるため、海外でも「surimi」の愛称で親しまれている。(3 すべての人に健康と福祉を)

参考文献

豊原治彦、岡弘康、藤田平二、山本常治、岡田稔、上西由翁、金城力、西岡不二雄、柴 眞、池内常郎、岡田稔、永瀬光俊、内藤茂三、加藤登著.日本伝統食品研究会編.『日本の伝統食品事典』.朝倉書店,P407~P457