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その他水産加工品

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歴史、文化

本ページでは、水産に分類される伝統食のうち、乾物、塩漬け、調味加工品、練り物、くん製品、水産発酵食品、節類、海藻製品に含められなかった品を「その他・水産加工品」として抜粋し概要を紹介する。

上記の分類に含まれない加工品として、水煮と油(オイル)漬けが挙げられる。いずれも家庭で行える調理方法であるが、缶詰や真空パックを利用した保存食品として市場に流通している。代表的な 缶詰製品に、まぐろやかつおの油漬けやさばの水煮などがある。
缶詰の原理は、19世紀のフランスで発明された。ニコラ・アペールにより、食品を瓶詰めにして加熱、殺菌することで長期保存する方法が編み出された。しかし、瓶ならではの割れやすさが課題であったため、後にイギリスで瓶よりも軽く破損しにくい材質として缶を使用する方法が発案された。
日本に缶詰が伝わったのは明治時代初期で、最初に作られた缶詰はいわしのオイル漬け(オイルサーディン)だったとされる。その後も牛肉の大和煮などが軍用食として利用されたが、1923年の関東大震災の折、救援物資に缶詰が用いられたことを機に庶民に普及した。今日では、さばやいわしなど青魚を中心に多様な魚種の水煮、油漬けが販売され、おかずとしてそのまま食べられるほか、さまざまな料理の材料として活用されている。
その他、各地で獲れた魚を有効利用した加工品が多数存在している。それらは、魚の内臓や骨まで活用したものがあり、貴重な食材を無駄にしない日本人ならではの知恵が反映されたものとなっている。

特徴、種類

<魚の水煮>
水煮とは、味をつけずにそのまま水のみ、もしくは薄い塩水で食材を煮るなどして加工されたものを指す。通常、食材の下ごしらえとして行われる調理法であるが、豆類、魚介類、野菜などの水煮が缶詰や真空パックなどで販売されている。塩を加える場合は、味付けではなく、あく抜きや臭み取り、保存性を高めることを目的に行う。魚介類の水煮としては、さばやいわしが一般的で、主に缶詰として販売されている。特に青魚は水煮にすることで、特有の臭みを抑えることができる。

<魚の油(オイル)漬け>
油漬けは、「蒸す」もしくは「煮る」などで加熱調理した魚を油漬けにしたもの。油には、オリーブオイルや綿実油など酸化しにくい植物油が使用され、主に缶詰として販売されている。魚の油漬けのポピュラーなものとして、オイルサーディン(いわしの油漬け)やまぐろやかつおのツナ缶が挙げられる。また、隠し味などに重宝するアンチョビは、かたくちいわしの塩漬けを発酵させた後、オリーブオイルなどに漬けた加工品である。フィレータイプやロールタイプ、ペースト状のものなど、その加工法もさまざまである。

<その他の水産加工品>
日本各地では、あんこうの肝臓で「海のフォアグラ」とも称される「あんきも」やカニの中腸線(肝臓とすい臓の機能を持つ部分)を用いた「かにみそ」、ウニをペースト状にした「練うに」、廃棄していたうなぎの骨を油で揚げたものなど、多様な部位を活用した加工品がつくられている。
なお、うなぎの骨は、うなぎの名産地である静岡県の特産品として知られる。 

製造方法

この分類の各品はいずれも、材料をそのまま煮る、オイル漬けにする、もしくは元の状態を生かした形で、簡単な加工を施してつくられる。その後、缶詰や瓶詰め、真空パックなど、長期保存可能な形で製品として流通される。

地域との関係性

水煮や油漬けは主に缶詰に加工され、全国に流通している。各地の漁港で獲れた魚は新鮮なうちに加工し、メーカー独自のパッケージで販売されている。それぞれの土地の知恵と発想をいかした多彩な加工品が開発され、地域おこしなどに役立てられている。

サステナビリティ・SDGsへの貢献

生態系や資源の持続性に配慮した方法で漁獲、生産された水産物に対して、認証プログラムの一環として水産エコラベルを付与し、消費者の選択肢にしてもらう取り組みが世界的に進められている。国内の水産加工会社大手では、代表的な認証プログラムのひとつMSC(海洋管理協議会)や、環境に配慮した責任ある養殖に対する認証プログラムであるASC(水産養殖管理協議会)などの認証を取得した水産物の積極的な利用が推進され、缶詰や冷凍食品として販売されている。こうした取り組みについて、今後さらなる認知拡大が期待されている。
(12 つくる責任 使う責任、14 海の豊かさを守ろう)